伝記から学ぶこと(5年生・国語)
いま、小学5年生の国語では、漫画の神様とも称される「手塚治虫」の単元を学習しています。
教科書の上では「伝記を読んで感想文を書く」という活動が中心の単元ですが、「より伝記の世界と自分自身を繋げてほしい」という願いを込め、単元のまとめの活動として、リーフレット作成を行っています。自分が憧れている偉人(人物)を選び、その人が成し遂げた功績をまとめながら、「なぜ自分がその人に惹かれたのか」「今の自分、そして将来の自分とどう繋がっているのか」を、伝記形式のリーフレットに仕立てていくという試みです。




かつて、メジャーリーガーの大谷翔平選手がWBCの決勝・アメリカ戦を前に「憧れるのをやめましょう」という言葉を残し、大きな話題となりました。「憧れていては超えられない」という、第一線に立つ者としての至言です。
しかし、今回の国語の授業では、あえて「憧れ」という感情を強く意識させました。
なぜなら、今、5年生という時期は、まさに「自我の形成(アイデンティティの確立)」が始まる大切な一歩目だからです。
「自分は一体何者なのか、そして将来、何者になっていきたいのか」
その羅針盤となるのが、他でもない「憧れの存在」です。この多感な時期に、国語の教科書で伝記を学ぶ機会があるというのは、教員としてもまさに僥倖であると感じています。



子どもたちは可能性の塊であり、何者にでもなれる力を秘めています。ですが、その中から「自分がなりたい姿」を選び取るのは、私たち教員ではなく、子どもたち自身です。
授業が始まると、子どもたちは思い思いに、心の中にある漠然とした「憧れ」を言葉にし、文章へと紡ぎ始めました。中には、この授業をきっかけに、初めて「なりたい自分」を真剣に意識し始めた子もいます。
教室を回っていると、あちこちから熱のこもった声が聞こえてきました。
「先生、この人って本当にすごいんだよ!だってね……!」
「将来は医者になりたいから、この人のことを調べたら、もっと憧れが強くなった!」
教科書の中の文字だった「言葉」が、子どもたちの実生活、そして人生にカチリと結びついた瞬間でした。子どもたちの瞳が輝くその姿に、国語の教員として、胸が熱くなるほどの感動を覚えました。




子どもたちが作成しているリーフレットには、今、この瞬間にしか書けない、純粋で力強い「未来への一歩」が詰まっています。
夢や憧れを実現させることは容易ではありませんが、少しでもなりたい自分に近づいていけるといいですね。
