ICT"で"教えるのではなく、ICT"を"教える

人間の仕事が人工知能にとって代わられるという2045年問題をはじめ、
近年の情報化社会の発展には目覚ましいものがあります。

その社会変革の中、日出学園はICT教育の目標として
ICT「で」教えるから、ICT「を」教えるヘ
を打ち出しました。

単にiPadやプロジェクター等の最先端ICT機器を手段として導入するだけでなく、
ICT機器、情報化社会との関わり方そのもの(目的)を学校教育の中で教えていく、
それが日出学園の目指すICT教育です。

以下では、方針に基づいた特徴を4つに分けて紹介しています。
その1.生徒も試行錯誤するICT
その2.学校でも当たり前に、日常の延長としてICTが使える環境へ
その3.ICTを知ることは、ヒトを知ること
その4.ICTの導入の先にあるICTのいらない学校

日出学園ICT教育 4つの特徴

その1.生徒も試行錯誤し、創造するICT

例えばスマホで新しくスケジュール管理のアプリを探すとき、私達はどのような行動を取るでしょうか。

  • 検索窓に「スケジュール」等と入力し、出てくるアプリを片端から試す。
  • 色々な友達からオススメアプリを聞き、その中から自分に合ったものを選定する。

ICTとは本来、既存の機器(ハード・ソフトを問わず)を器用に活用できる力ではありません。教員の主観で「便利だ」と選定して用意された環境ではなく、生徒自身が自分で取捨選択をし、試行錯誤と失敗の中で学んでいく。それが日出学園のICT環境です。結果として、授業以外でのICT活用が現在は格段に広がっています。

【活動の例】
生徒自身の豊かな発想、試行錯誤から生まれた文化の一例を紹介します。
 >アプリの選定から模索するデジタル生徒総会
 >COCOARを活用した学園祭ARスタンプラリー
 >リアルタイムコメント投稿による生徒総会/Google Formを活用した生徒総会投票
 >日出祭会計処理へのAirレジ活用(売上データの逐次把握/翌年度へのデータ活用)
 >3DプリンタやVRゴーグルを活用した広報媒体の作成(生徒の作った360°映像や3Dプリンタの造形物がそのまま広報の道具に)
 >日出祭での自作プロジェクションマッピング上映付き演奏会(吹奏楽部)
 

また既存機器の活用を越え、全ての生徒が“使う側ではなく創る側になる”経験を持てることを日出学園では大切にしています。
>日出学園の中学1年生、中学2年生は年に1回「ICT行事」を実施。
>高校2年生の授業で学校設定科目「デジタルコンテンツ演習」を開講。
>学校での経験をいかして、卒業生が開発したスマホアプリ。

その2.学校でも当たり前に、日常の延長としてICTが使える環境へ

本来は時空間的制約から開放されたICTに、様々な理由で制限をかけて使用することが学校現場ではよくあります。
ICTは日常に今、完全に溶け込んでいます。スケジュール管理アプリや備忘録に代表されるサービスの流行は、まるで我々の脳の一部がネットワーク上にあるような感覚を生み出しています。
デバイスやソフトを問わないICTの感覚そのものを学校内で実現する。個人のスマホを活用したBYOD (Bring your own device)も推奨しながら、これらを学内で実現する共通プラットフォームとして、

  • 【ソフト】Classi、Google for Education、COCOAR
  • 【端 末】Windows PC 39台、iPad 52台、Windowsタブレット 14台
  • 【投影装置】電子黒板機能付きプロジェクター各フロア2台、無線LANの校舎内配備
  • 【その他ガジェット】Oculus Rift DK2(VRゴーグル)、3Dプリンタ、ドローン、レーザーカッター

が日出学園には用意されています。ICT機器は、教員が授業をするためだけのものではありません。これらの機器は教員・生徒を問わず学校内や家庭で自由に活用ができます。

その3.ICTを知ることは、ヒトを知ること

ICTとは何でしょうか。
決して、タブレットやコンピュータを指す言葉ではありません。
電話やメールの登場による時空間的制約の解放、SNSの登場によるインタラクティブな情報のやり取り。遡っていけば文字によって、人間が記憶を記録にすることを発明した段階からICTは始まっています。ICTはInformation and Communication Technologyであり、情報技術の歴史はコミュニケーションの歴史、人類の営みの歴史です。
あわせて情報技術は人間そのものへの理解を深めていきました。例えば人工知能技術は「便利な道具」として私達の生活に変化を与えただけでなく、人間の精神に関するメタファーを提供しています。私達の日常を見渡せば、人間のように思考し、行動するコンピュータやロボットが今も溢れています。果たして人間と彼らは何が違うのか? そもそも人間も機械の一種ではないのか? であれば、機械が人間になる日も近いのではないか? そんな世界で、自分達は機械とどうやって付き合って行くのか?
中学校・高等学校への在籍期間は生徒にとって自分自身を見つめる大切な時期です。ICTを知ることで、ヒトそのもの、自分の生き方を見つめ直す。日出学園では高校2年生の必修教科「社会と情報」でコンピュータとヒトを見つめる認知科学の特別講座を実施しています。
日出学園生にとって、ICTは決して単なるツールにはなりません。

>高校生ICTカンファレンス等へ参加

その4.ICTの導入の先にあるICTのいらない学校

――今から“橋”を渡ります。
今では当たり前となった情報機器における「かな漢字変換」。前後の文脈から意味内容を推定して漢字を表示する機能もAI(人工知能)技術の一つですが、技術として浸透するとAIという言葉はあまり使われなくなります。
現在ICT教育という言葉から想起されるものはタブレットやプロジェクターといった情報機器を活用した授業です。きっとこの言葉が指すものも、すぐに変わっていくでしょう。
効率化された先に、本当に必要なことが見える。日出学園は未来のICT教育のカタチを生徒と共に、模索し続けています。